稟議書の作り方(射出成形の設備導入・稟議書作成のポイント)

稟議書の作り方(射出成形の設備導入・稟議書作成のポイント)

射出成形の新たな設備をスムーズに導入するためにも、導入効果が分かりやすい稟議書の作成が重要です。このページでは射出成形の設備導入・稟議書作成のポイントについてご説明します。

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目次

稟議書作成のポイント
稟議書作成の具体例
稟議書のダウンロード資料

 


 

稟議書作成のポイント

 

事前に取り付けたい理解と承認

射出成形の設備投資は、複数の部署、複数の関係者が意思決定に関わる特徴があり、それぞれ意思決定の基準が異なります。

現場担当者の視点

  • 設備の使いやすさを重視

保全担当者の視点

  • 保全部品の供給リードタイムや保全のしやすさを重視

購買部門の視点

  • 購入価格を重視

意思決定に関わる方の規準はそれぞれ異なることから、意思決定に際し、大きな意見の乖離や組織内軋轢が出ないように、あらかじめ射出成形の現場担当者、設備保全、生産技術、工場管理者、購買部門など関係部門へ設備投資の目的を説明し、理解と承認を得ておいた方がよいでしょう。

 

組織の階層ごとに「伝わる言葉」は異なる

意思決定に関わる担当者へ設備投資の目的を事前に伝え、理解・承認を得る際に、組織の階層ごとに伝える言葉を変えることで、目的を効果的に伝えられると言われています。

「生産性を高めて利益を増やす」を設備投資目的する場合

現場レベル

現場レベルでは、「チョコ停削減」「段取り時間短縮」「シングル段取り実現」などでの言葉で伝えると効果的ではないでしょうか。

管理者レベル

管理者レベルでは、「設備稼働率の向上」「面積生産性向上」「製造原価低減」などの言葉で伝えると効果的ではないでしょうか。

経営者レベル

経営層レベルでは、「限界利益向上」「ROI改善」「ROA改善」などの言葉で伝えると設備投資目的は容易に伝えられるのではないでしょうか。

 

「伝える言葉」を変えて、効果的に目的を伝える

このように、「生産性を高めて利益を増やす」という目的を伝えるのに、意思決定の階層ごとに「伝える言葉」を変えた方が効果的に設備投資目的を伝えられます。この点も企業の設備投資意思決定プロセスの特徴ですし、稟議書作成に活用できる視点と言えそうです。

 

設備投資の採算性を考えておく

設備投資を行う際、「設備が古くなったから」「補修部品の入手が困難になったから」「仕事の内容が変わったから」「現有設備で対応できない製品を受注したから」「増産の要請があるから」など、いろいろな理由や規準で設備投資を検討されると思います。

中でも、「投資収益」の観点から設備投資の採算性を考えておくことは重要な要素です。投資採算の考え方はいろいろありますが、「将来に渡り得られる利益を現在の価値に換算し、得られる収益が投資金額を上回っているかを確認する」という正味現在価値の算出によるディスカウントキャッシュフロー方式(DCF法)の考え方が一般的です。

 

投資採算の考え方(例)

例えば、毎年2000万円の利益を得られる3年間の仕事に対する投資を銀行借り入れ金利年1.5%で賄う際、1年後得られる利益、2年後得られる利益、3年後得られる利益に対して、割引率を用いて現在の価値に置き換え計算します。

  • 1年目 2000÷(1+0.015) =1970
  • 2年目 2000÷(1+0.015) ^2 =1941.3
  • 3年目 2000÷(1+0.015) ^3 =1912.6

つまり、投資判断基準となる得られる利益は、単純に2000万円×3年の6000万円ではなく、1年目~3年目までの現在正味価値の合計金額5823.9万円となります。

よって、設備投資をして3年後設備を廃棄するとすれば、設備投資金額は5823.9万円以下に納める必要があります。

実際には射出成形機及び周辺機器設備の法定償却期間は8年ですので、3年で設備廃棄とはなりませんが、将来得られる利益の「正味現在価値」「投資回収期間」「投資利益」などから設備投資金額は妥当なのか考える必要はあるでしょう。

 

懸念事項の事前検証

設備投資の意思決定段階ではさまざまな懸念事項が予測されます。
例えば、「今まで使用した経験が無い設備を導入する」「今までとは違うメーカーの設備を導入する」などの場合、「現場作業者の設備操作に支障はないか」「期待する効果は発揮できるか」「購入メーカーの変更によるスイッチングコストは妥当か」などについては懸念事項としてあらかじめ整理し、解決策を検討しておくことをお勧めいたします。

具体的な手段

  • 見積り仕様書を作成し、業者へ詳細仕様を提示しておく
  • デモ機活用による操作性や期待性能の事前確認
  • サンプルの取り寄せによる効果の事前確認
  • 実際の使用具体例の入手

上記などの手段を通じて、予測される懸念事項をあらかじめ払拭しておく必要もあります。

 

稟議書作成のポイント3点

組織内の各方面への理解と、投資効果検討、懸念事項の払拭が済むと、稟議書の作成の段階になります。そこでのポイントは以下の3点があります。

ポイント① 稟議書タイトルを簡潔に明記する

「新規受注製品○○用設備導入稟議」「○○トン成形機更新稟議」等内容が簡潔に伝わるタイトルを標記します。

ポイント② 稟議申請の背景課題目的を明記する

中期経営計画に沿った設備目的、原価低減目的、CO2排出削減目的、品質向上目的、開発目的等に沿って、背景・課題・目的の詳細を稟議申請に明記します。

ポイント③ 期待する効果を明記する

生産性向上、品質向上、在庫削減、製造原価低減などについて、設備投資の採算性の計算と共に具体的数字を入れて期待する効果を明記します。また、期待する効果を明確にすると同時に効果の検証方法も整理しておくと良いでしょう。

なかでも、設備投資の採算性と期待する効果、効果測定については大切な項目と言えます、更に大切なポイントとしては、決裁者目線で稟議書を起案することと言えそうです。

 


 

稟議書作成の具体例

 

稟議書の作成事例・『粒断機』の場合

稟議書の目次

  1. 表題
  2. 背景・課題・目的
  3. 期待する効果
  4. 懸念事項
  5. 購入製品名及び予算
  6. 期待する効果計算の添付資料

 

1 表題

「樹脂部品の原価低減・CO2排出量削減用設備30台導入稟議」

 背景・課題・目的

高騰する樹脂価格と樹脂不足の一方で、客先からのコストダウン要請による原価低減の必要性、樹脂供給不足により顧客への製品供給は逼迫し、供給責任の説明が顕在化している。加えて、2050年カーボンニュートラルへ向けての中期目標達成の課題解決へ向け、具体的取組みを検討した。

今回検討したのは、その中でも射出成形工程におけるスプールランナーのリサイクル率を向上させ、原価低減、納期遅延防止、CO2削減の課題解決に対応する。

 期待する効果

① PP年間樹脂購入量27トン削減による原価低減 ¥81,460(千円)

  • 累計正味現在価値換算¥81,460(千円)

② 27トンの樹脂廃棄料金の削減額 ¥5,616(千円)

  • 累計正味現在価値換算¥5,430(千円)
合計 ¥86,890(千円)
  • ①②共に対象設備の法定償却年数8年にて算出
総投資金額¥25,200(千円)
  • 投資回収期間2年4ヶ月
    資本コストを勘案した投資回収期間・投資収益は当社規準を満たしており、本稟議案件の投資効果は妥当と判断します。※算出根拠は期待する効果計算の添付書通り

③年間CO2の排出量を115トン削減

  • PP年間樹脂購入量27トン削減による
    本稟議案件によるCO2削減効果は改正省エネ法、環境省グリーンバリュープラットホームスコープ3対応のCO2排出削減となり、当社環境目標に沿った中期計画達成に寄与するCO2削減量となる。※算出根拠は期待する効果計算の添付書通り

④ 製品供給の納期遅延リスクと過剰在庫の軽減

  • PP樹脂供給のリードタイムが長期化する中、リサイクル材を活用し、PP樹脂全体の調達量を削減することで、当社製品供給の納期遅延リスクと過剰在庫軽減に対応する

= = = = = = = = = = = = = = =

期待する効果は以上の4点です。各項目の期待効果の検証は単年度事業計画に盛り込み、PDCAサイクルにて検証します。

 

 懸念事項

リサイクル率アップによる品質への影響

貸出機を生産ラインへ配置し、リサイクル材を実際の成形にて実験を実施。
生産された完成品の外観、強度試験の結果は品質規準の範囲内であることを確認した。
また、量産試験の連続成形中のMI値(樹脂の流動性の値)はリサイクル率10%時と25%時において、大きな変化は見られなかった。 よって、リサイクル率25%への変更において、品質及び量産技術に関わる懸念事項は解消されている。

 購入製品名及び予算

粒断機SPCⅢ-750

  • 単価 ¥840(千円)
  • 台数 30台
  • 投資金額合計 ¥25,200(千円)

 

期待する効果計算の添付資料

PP樹脂購入量(年)660トンの内訳

PP樹脂購入量(年)660トンの内訳
製品としての出荷量(年) 420トン
製品にならなかったPP樹脂(年)
・スプールランナー(年)180トン
・パージ樹脂の廃棄材料(年)60トン 

240トン
合計 660トン

廃棄とリサイクルの内訳

製品にならなかったPP樹脂(240トン)の内訳
産業廃棄物処理業者引き取り量(年) 222トン
リサイクルできた量(年) 18トン
合計 240トン

正味リサイクル材料は年間18トン。
現在リサイクル率10%を25%へ増量し、更に27トンをリサイクルする。

 

上記から得られる原価低減効果

一年間の原価低減

  • PP材料 1KG390円×27トン=10,530(千円)

得られる現在正味価値の計算

導入設備の法定償却を年数8年にて算出

  • 1年目10,530÷(1+0.0075)=10,450
  • 2年目10,530÷(1+0,0075)^2=10,374
  • 3年目10,530÷(1+0,0075)^3=10,296
  • ~8年目10,530÷(1+0.0075)^8=9,919

8年間で得られる現在正味価値

  • 合計¥81,460(千円)

27トンの樹脂廃棄処理費用

27トンの樹脂廃棄処理費用(8年間) 5,616(千円)
 1㎥26(千円)×27回×8年=5,616(千円)
正味現在価値 5,430(千円)
合計正味現在価値 86,890(千円)
投資金額 25,200(千円)
 粒断機¥840(千円)×30台
投資回収期間
  • 2年3.3ヶ月

 

CO2の削減効果

PP1kgを製造するのに樹脂メーカーが輩出するCO2

1,483kg

スプールランナーリサイクル率アップで削減できる排出Co2

1,483kg×27トン

年間CO2排出削減量

40.041トン
※ 一般社団法人プラスチック循環利用協会「LCAを考える」P26参照により算出

PPを1トン廃棄焼却することによるCO2排出量

2,765kg

年間CO2排出削減量

は2,765kg×27トン=74.655トン
* 地球温暖化対策の推進に関する施行令(平成11年政令第14号)第8条1項参考資料参照により算出

以上によりCO2排出削減効果は年間114.696トンを見込みます。

 


 

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