知っておきたいリサイクル樹脂材料の適正還元率と成形品の評価基準

知っておきたいリサイクル樹脂材料の適正還元率と成形品の評価基準|株式会社ハーモ

目次

 

無意識に還元される樹脂の粉砕材

樹脂材料のリサイクル

成形品の製造原価の多くを占める樹脂原価、毎年のように要請されるコストダウンに対して、成形品質を落とすことなく材料原価を低減するために、様々な取組みをされているかと思います。中でも、樹脂材料のリサイクルは重要な要素と考えられます。
しかし、何回のリサイクルで何割の樹脂が製品に還元されるのかについては、あまり知られておらず、下記の課題を抱えたままリサイクルを行なっている射出成形加工業者様は意外と多いのではないでしょうか。

樹脂リサイクルに感じている課題

  • 材料リターンを行なっているが物性的に問題無いか不安
  • リサイクル材による品質への影響を適切に説明することができない
  • 何%リサイクル材を混ぜて良いか分らない

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樹脂リサイクル回数別の材料分布

樹脂のリサイクル材は何回目で何割の分布になるかを表に示しました。

25%リサイクルの樹脂再生回数別樹脂分布

繰り返し
再生回数
新ペレット(%) 再生1回
ペレット(%)
再生2回
ペレット(%)
再生3回
ペレット(%)
再生4回
ペレット(%)
再生5回
ペレット(%)
合計(%)
1 75 25         100
2 75 18.8 6.2       100
3 75 18.8 4.7 1.5     100
4 75 18.8 4.7 1.1 0.4   100
5 75 18.8 4.7 1.1 0.3 0.1 100

この表では、樹脂バージン材の投入後、25%をリサイクル材として使用した場合に、何回目でほぼ消費されるかを理論計算式に当てはめて示しています。

繰り返し再生1回目では1ショットを100とした場合、樹脂バージン材は75%・リサイクル材は25%となり、再生5回目では5回リサイクルされた材料の割合は0.1%未満(0.0976563%)と0に近い値となります。

つまり、25%リサイクル材を使用した成形品は、再生5回目では、バージン材と再生回数4回以内の樹脂材料99.9%で占められていることが分ります。

実際の成形現場においては、乾燥に必要な時間分の樹脂を乾燥機に投入して成形を行ないますので、繰り返し再生2回目に到達するまでには、100ショット200ショット等、時間がかかります。仮に再生2回目までに到達するのに100ショットかかるとすると、2回再生材使用の成形品は101~200ショットまでの製品、3回再生材使用の成形品は201~300ショットまでの製品、5回再生材使用の成形品は401~500ショットまでが対象成形品となります。

つまり、401ショット目以降の成形品は、樹脂バージン材と4回以内の再生材99.9%で組成された材料により繰り返して成形されることになります。

成形品評価基準の考え方

以下の図は、樹脂リサイクル回数別の材料分布の割合の計算式になります。

樹脂の再生材料分布の理論計算式

繰り返し
再生回数
新ペレット(%) 再生1回
ペレット(%)
再生2回
ペレット(%)
再生3回
ペレット(%)
再生4回
ペレット(%)
再生5回
ペレット(%)
0 1          
1 1-r r        
2 1-r r(1-r) r^2      
3 1-r r(1-r) r^2(1-r) r^3    
4 1-r r(1-r) r^2(1-r) r^3(1-r) r^4  
5 1-r r(1-r) r^2(1-r) r^3(1-r) r^4(1-r) r^5

※6~∞は省略しています

リサイクル率を30%とした場合は「r(r=リサイクル率)」へ0.3を代入し計算することでリサイクル回数別の樹脂分布を求めることができます。

リサイクル率を30%とした場合、5回目再生材の分布比率(r^5)は0.243%となり、リサイクル率を30%へ増加させると5回目再生材の割合は、リサイクル率25%の時より増加していることが分ります。

この様に、リサイクル率により再生回数別の樹脂分布割合は変化しますので、希望するリサイクル率に応じて、リサイクル材料の分布は再生何回目で何%になるかを計算し、成形品の樹脂組成は適切であるか予め検証しておくことをお勧めします。

25%リサイクル材を使用した際の評価規準

では、25%リサイクル材を使用した際の評価規準について考えてみます。25%のリサイクル材を使い生産される成形品の組成は、再生5回以降ではバージン材と再生4回以内の樹脂99.9%以上の組成により生産されることから、成形品の引っ張り強度や曲げ強度等の製品品質は、再生5回目の樹脂の物性変化を規準に評価しておけば良いと言えそうです。

 

樹脂ごとの還元割合と物性変化

樹脂ごとにどのように物性変化が起きるか調べてみたところ、樹脂メーカーにより若干の違いは見られるものの、代表的な樹脂について、概ね以下のようにまとめることができました。

樹脂バージン材100に対しての物性変化

POM 5回再生時

  還元率30% 還元率50% 還元率100%
引っ張り強さ保持率 100 100 100
引っ張り伸び保持率 100 100 85

LCP 5回再生時

  還元率30% 還元率50% 還元率100%
引っ張り強さ保持率 96 95〜99 75〜82
引っ張り伸び保持率 94 92〜97 82〜83
曲げ強さ保持率 97~99 79~86
曲げ弾性率 88~99 86~93

PBT 5回再生時 ※( )はガラス30%入り

  還元率30% 還元率50% 還元率100%
引っ張り強さ保持率 100 (91) 100 100 (61)
引っ張り伸び保持率 100 90 81

PPS 5回再生時

  還元率30% 還元率50% 還元率100%
引っ張り強さ保持率 95 88 78
引っ張り伸び保持率 95 89 80
曲げ強さ保持率 95 88 81
曲げ弾性率 95 78 51

PC 5回再生時

  還元率30% 還元率50% 還元率100%
引っ張り強さ保持率 99   99
引っ張り伸び保持率 104   91

まとめ

以上、再生率30%では多くの樹脂において、物性変化は10%以内に収まっており、POM等の樹脂によっては、再生率100%でも大きな物性変化が視られないケースも認められました。

共通した条件としては、再生材に含まれる粉による影響、再生材粒度のバラツキによる可塑化への影響、乾燥不足による影響等は考慮されておりませんでした。また、多くの樹脂メーカーの推奨リサイクル率は、25%~30%を推奨する樹脂が比較的多いことも分りました。

 

UL規格での樹脂の適正還元率

UL認定材料では、UL746Dに「重量で25%を超える熱可塑性の樹脂再生材を使用した材料で部品を成形してはならない。但し、別途の調査の結果特定の部品の性能が低下しなかったことが認められられなかったときはこの限りではない」と規定されています。
LCPにおいては一部のグレードで70%まで、PPSにおいても一部のグレードで、50%まで認められています。

 

樹脂リサイクル材料のあるべき姿

リサイクル回数別の樹脂分布の割合と物性変化の観点から、どの程度までリサイクルが可能であるかを予め検証できたとしても、リサイクル材料がバージンペレットと同じ粒度であるとは限りません。

還元率が一緒でも可塑化段階の粒度のバラツキにより、成形品質に影響を及ぼすことが考えられます。また、粉が多いと不良の原因にも繋がります。

よって、リサイクルされる樹脂は、粒度が均一でしかもバージンペレットのサイズに近く、不良の原因となる粉が極力少ないことが理想であると言えそうです。

 

粉による成形不良の課題を解決するハーモ製品

粒断機

樹脂のリサイクル率向上で製造原価低減に貢献

ハーモ製品サイト|粒断機SPCIISPCIIIシリーズ|ogp (1) 製品ページを見る

動画でわかりやすく

環境に配慮し材料コストにも貢献|粒断機・混合機の紹介動画

 

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樹脂リサイクルに関するQ&A

  • Q:PEを使い自動車部品を生産しています。粉砕粒が毛羽立って困っています
  • Q:PBTを再利用すると変色する
  • Q:通常の粉砕機では樹脂の粒が揃わず安定成形できない
  • Q:光学特性を維持した樹脂リサイクルが難しいです
  • Q:柔らかいPVCのリサイクル材がうまくいかない
  • Q:粉砕によりガラス強化材の繊維長が短くなり、製品強度を保てるかが悩み
  • Q:炭化した黒点不良で電子部品の絶縁品質を保てない
  • Q:高粘度で高硬度の樹脂がうまくリサイクルできません

上記の質問にお答えしています。詳しくは下記ページをご覧ください。

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