新しい欧州ELVが2026年から施行予定
2026年から施行予定の新しい欧州ELV(End of Life Vehicle)はこれまでの旧ELV指令(2000/53/EC)規則が格上げされ、EU域内の全加盟国に直接的な法的拘束力を持ち、統一された実施が義務付けられます。 特に注目されているのが「自動車に使うプラスチックの再生材利用義務化」 です。
その背景
プラスチック再利用率の考え方
旧ELV指令では自動車重量の85%を再資源化 が求められていましたが、現実にはプラスチック部品の再資源化率が伸び悩んでいました。
軽量化とコスト削減のために樹脂部品は拡大してきたものの、熱可塑性樹脂や複合材 (FRP)の分離回収は焼却処理や埋立てに頼るケースが大半でした。
それらを背景に欧州委員会は「再利用可能・循環可能な自動車」を法的に実現するため、再生プラスチック材料の使用を義務化する新制度を認めました。
新規則の概要
再生プラスチック材量25%使用を段階的に導入
新ELV規制では製造企業に対して自動車に使用するプラスチック材料の内、当面25%を再生材とすることを義務付けるようです。
再生材の内訳(廃棄自動車由来のリサイクル材が条件)
内訳も細かく設定され、使用する再生材25%の内、6.25%は廃棄自動車由来のリサイクル材を条件とされています。また、施行後は段階的に量が拡大され、6年後に15%、8年後に20%、10年後には25%が完全義務化になる予定です。
廃棄自動車由来のリサイクル材率
2026年施行
6.25%
6年後
15%
8年後
20%
10年後
25%
この義務化により、再生プラスチックを使わずに欧州での車両型式認証を取得できず、販売ができなくなることが予想されます。
施行時期と適用対象
新規則は2025年内にEU官報交付予定で、2026年初頭には正式施行される見込みです。対象は従来の乗用車から商用バスや二輪車まで拡大される見込みです。
施行に伴い、全ての廃棄自動車に廃棄証明書が発行され、不正輸出や行方不明車両を防ぐ仕組みが導入され、欧州加盟国の車両登録システムを統合する「MOVE-HUB」構想も進めており、車両のライフサイクル全体をデジタル管理されるようになりそうです。
業界の賛否と課題
自動車メーカーの半反応は様々で、独系メーカーの多くは、廃車からの再生プラスチック25%使用は現実的ではないと主張しており、フランス勢を中心として段階的導入へのサポートを検討している国もあります。
また、技術面や経済面での課題も少なくなく、廃車から効率的に樹脂を分別・回収するには、解体工程の自動化、素材識別技術、ケミカルリサイクル技術等、様々な課題もあります。
日本企業 への影響
国内自動車メーカーや樹脂メーカーにとってもこの規制は避けられず、廃車由来の再生プラスチックの使用と共に、廃車由来以外のプラスチックリサイクルの取組みに付いても強化が望まれます。
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