今まで通りの半自動成形が出来なくなる?
2021年3月25日、ISO20430に準拠する形で射出成形機の安全規格である『JIS B6711』が改定されました。規格の要求項目の中には、半自動成形(オーバーライド)における安全規格の変更が含まれています。
規格変更に伴い、今後生産出荷される射出成形機では今まで通りの「人による半自動成形」は制約を受けることになりそうです。
一般社団法人・日本規格協会へ問い合わせてみました
安全規格JIS B6711の原本を読み込んだところ、解釈が難しい表現であったため、一般社団法人日本規格協会(JIS)へ問い合わせをし、以下の回答を頂きました。
質問.1
従来の半自動運転は今後使用できない?
『B6711』半自動成形規格の4.1.2.2.2及び、4.123を確認すると、読み方によっては従来の半自動運転は、今後使用できないようにも受取れますが、どの様に解釈すればよいかをご教授賜りたいと思います。
回答.1
ノーモーションモードであれば、規格上は従来と変わらない運用が可能
『JIS B 6711』の4.1.2.2.2(停止機能-運転中断)及び、4.123(停止機能-電源の遮断又は故障)では、機械を停止する場合、どのような状態でなければならないかを示しています。
その中で、半自動運転のうち、モーションモードと呼ばれる動きは、4.2.3.2(保護装置を無効化したコア及び/又はエジェクタ動作の特殊モード)に規定されており、JIMS(日本産業機械工業会規格)対応の射出成形機と同程度の運用が可能と考えます。また、ノーモーションモードであれば規格上は従来と変わらない運用が可能と考えます。
一方で、ガードロック機能の追加により、生産サイクル中に安全扉を開けられなかったり、特別な安全機能を持った装置を追加する必要があるといったことは考えられます。
質問.2
停止状態であれば従来の規格と変わらない?
ご丁寧な回答、誠にありがとうございました。つきましては、2点ほど確認させて頂きたく、御連絡申し上げます。
1点目、「ノーモーションであれば、規格上は従来と変わらない運用が可能と考えます」このノーモーションとは、直訳で解釈すると停止と解釈できますが、「停止状態であれば従来の規格と変わらない」との解釈で宜しかったでしょうか?
2点目、「一方で、ガードロック機能の追加により、生産サイクル中に安全扉を開けられなかったり、特別な安全機能を持った装置を追加する必要があるといったことは考えられます」とありますが、規格変更により、ガードロック機能が追加され、生産サイクル中には、安全扉を開けられなくなった。また、生産サイクル中に安全扉を開けたい場合は、特別な安全装置を追加する必要があるとの解釈で宜しかったでしょうか、ご教授賜りたく存じ上げます。
回答.2
生産サイクル中に扉を開けて人が行っていた作業は、今後対応が必要になる
1点目について 「ノーモーションモード」とは射出成形で慣用的用いられている用語であり、半自動成形において安全扉が開かれている間に型閉じ(場合によっては型開きも)、コア、エジェクタの各動作が禁止されますが、安全扉が開いた状態でスクリューの後退や射出装置(ノズル)の後退が可能なモードです。
一方、「モーションモード」では条件は加わりますがコアとエジェクタの動作が追加で許可されます。これらの動作が従来とは変わらないという意味です。
2点目について、ご理解の通りです。
まとめ
今後、制約を受ける半自動成形
一般社団法人日本規格協会からの回答の「2点目について、ご理解の通りです。」から、JIS B6711の規格変更により、今まで生産サイクル中に扉を開けて人が行っていた作業は今後扉を開けずに作業可能な機械装置に置き換えるか、特別な安全装置を追加する必要がありそうです。
規格の移行期間を経て、今後新たに導入される成形機では、生産性や労働安全衛生の観点から、人手による半自動成形は新たな生産方法へ代替することが望ましいと言えそうです。
一方、従前通りの半自動成形を行なう場合は、特別な安全装置の設置に伴い、作業手順が増えたり、成形機動作の制約から成形サイクルが長くなる等、生産性の低下も予測されそうです。 また、規格要求への対応を怠り労働災害が起きた場合、罰則を受けることも考えられそうです。
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半自動成形は人から機械へ
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